公益財団法人 北海道盲導犬協会
事務部渉外・庶務担当部長 大徳 吉則 様 |
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盲導犬が外で働いているときにはどんな仕事をしているのか話してみたいと思います。盲導犬のしている仕事の一つ目は非常に単純ですが、真っ直ぐに歩くという仕事をしています。人間には利き手があり、足にも利き足があります。目をつぶったままですと真っ直ぐに歩けない身体をしています。盲導犬は歩道がある時には歩道の端を、歩道が無い時でも車道の端を真っ直ぐに歩くという仕事をしています。 二つ目の仕事は交差点に来ると止まって主人に知らせるという仕事です。よく盲導犬が道のりを覚えていて視覚障害者を場所まで誘導していると思われますが、実際には人が頭の中に地図を描きながら歩いているということになります。一般の方は盲導犬を見ると、視覚障害者を連れて盲導犬は偉いなと思うかもしれません。しかし、実際には人が盲導犬を使って歩いているということになります。あくまでも人が目的を持って、頭の中に地図を描きながら目的地まで歩いているということになります。 そうすると自分の知らないところには盲導犬と一緒に行けないかというとそうではありません。知らない街に降りて分からないと人に聞くと思います。盲導犬も人に聞くことによって、もしくは事前に調べる事によって知らない所でも活動する事が出来ます。 一つ目は真っ直ぐに歩く、二つ目は交差点で止まって知らせるという仕事、三つめは視覚障害者の目の代わりになって物を探す仕事です。皆さん目をつぶったまま自宅に帰るのは難しいですが、このホテルから出る事も難しいと思います。盲導犬はこの会場から出たい時には、「ドア」という号令をかけます。そうすると自分が最初に入ってきたドアを探してそこに視覚障害者を誘導していきます。そして、盲導犬が止まった時に頭から鼻先に手を伸ばしていくとその先にドアノブがあります。「椅子」という号令をかけて、止まった時に頭から鼻先に手を伸ばしていくと自分が座る座面を確認する事が出来ます。ここは2階ですので、「階段」という号令をかけると自分が昇ってきた階段を探して誘導していきます。勿論下に降りる方法は、階段の他にエレベーター、エスカレーターという号令があります。それぞれ言葉を聞き分けて誘導します。 視覚障害者は毎日、JRやバスを使って通勤している方もいます。「バス停」という号令をかけるとバス停に誘導していきます。バスの中に乗り「椅子」という号令をかけると空いている席を探して誘導していきます。盲導犬は50種ぐらいの言葉を覚えていきます。 最後に四つ目の仕事は視覚障害者を安全に目的地に誘導していくという仕事をしています。車社会ですので、私達でも外を歩くときはいつ事故に遭うかわかりません。視覚障害者が単独で外を歩くときは命がけで歩いていることになります。盲導犬は危険な時は命令に従わないという訓練を受けています。これは不服従の服従訓練というものになります。交差点を渡る時に「横断」という号令をかけて横断歩道を探して誘導します。犬は信号の色を見分けられるわけではありません。盲導犬の使用者が耳を使って車の流れを見ています。時計の針でいう3時9時の方向に音で車が流れていると前の信号は赤信号という事になります。その流れが止まって6時12時の方向に車が流れ出したら青信号ということになります。盲導犬は実は色盲に近いのではないかと言われています。信号の音を見分けている訳ではありません。車の音が聞こえない時、例えば田舎の道で赤信号でも車が来ていない時はそこを渡ります。勿論、盲導犬も車には引かれたくないので車が来ているときは「OK」と号令をかけても前に進みません。 視覚障害者は駅のホームなどで昨年は何度か事故になっておりニュースを見た方もいるかもしれません。犬はホームの下に降りるのは簡単ですが、横にいる視覚障害者が怪我をしてしまう時には命令に従わない事になります。夏には自転車がたくさん止まっていて、壁との隙間を犬は通る事ができても横にいる視覚障害者がぶつかってしまう。横の人がいる幅の安全を確認します。安全の確保は犬が自分の体だけではなく横にいる視覚障害者の方の横幅と高さの安全を見ながら歩いていることになります。 今日はサンディーが来ていますので犬を使って少し歩いてみたいと思います。 盲導犬というのは24時間仕事をしていると思われがちですが、そうではなくこのハーネスをつけている時だけが仕事中という意識を犬も持っています。皆さんが見かける時はハーネスをつけているので仕事の時です。外を歩いているのは1時間~2時間ですのでその間が盲導犬の仕事中です。ハーネスを外して家や職場にいる時は自分の場所で自由にしているのが盲導犬の普段の生活です。 (中略) 盲導犬の仕事を4つお話しました。もう1つ盲導犬の役割があります。視覚障害者の方は皆さん明るい方達ばかりですが、失明した当時の事を思い出すと生きる希望を失くしてしまう方が大変多いです。盲導犬の世話は目の見える方と一緒に生活していても、視覚障害者自身が自分でするよう指導しています。排泄、食事、体の手入れを自分でするよう指導しています。そうすることによって視覚障害者の生活が規則正しいリズムになり盲導犬が自分の心を支えてくれる存在になります。盲導犬というと犬が無償の愛情で人の為に仕えるというイメージがありますが、犬の訓練は良く出来た時に良く誉める、そして犬の世話をしてあげる。盲導犬と視覚障害者は喜びを共にしながらお互いに支え合って生きている、生活をしているということになります。短い時間でしたが有難うございます。今後とも宜しくお願いします。 |